イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

自然

鳩の復讐

コロナ禍が消えやらぬなか、遠方への旅行は難しい毎日。 とりあえず、旅は想像の中でしか無理ということで、 もともと好きな海外小説がますます魅力的に見えてくる。 バーチャルでない、足を動かす旅は近所の散歩ぐらいなのだけれど、 イルクーツクは自然が…

緑のイルクーツクとモップ猫とラジオテキスト5月号の「商売で『動く』」

イルクーツクは、いよいよライラックも咲いて、春満開。 でも、シベリアの春は、緑のみずみずしさがやっぱり目に染みる。 たとえば、中庭の緑、 公園の小径を縁取る緑 建物に寄り添う緑 猫が戸惑う緑 はしごと並ぶ緑 モスコビッチ412まで緑! 話はちょっと変…

春は川辺、春は猫

昼間は初夏のような気温になっても、なかなか春の花が見られず、 彩りに乏しかったイルクーツク。 でも最近はさすがに、いかにも春らしい表情になり、 アンガラ川の岸辺の「氷の上に行くのは危険」という看板も、 役目をすっかり終えてバカンス。 雨が降ると…

コロナ禍の中のイルクーツク

今年から連載を始めさせていただいた、集広舎のサイトの シベリア・イルクーツク生活日記という連載で、 新型コロナ対策が始まってからのイルクーツクの状況について書いてみました。 ちなみに、対策については、 タイガーバームを鼻の穴に塗るとか、 お酒で…

ラジオ「マイあさ!」でお話ししました

ご報告が遅れてしまい、すみません。 今朝のNHKラジオの「マイあさ!」という番組で、ロシアの医療について少しお話ししました。「海外マイあさだより」というコーナーです。以下の聞き逃しサービスで、5時40分台から聴けるようです(配信は4月25日(土)の…

シベリアの春の嵐

今日はほぼ一日中吹雪いていた。 でも、パウダースノーではなく、もっと湿り気があって、 すぐに融けるであろう、春の雪。 おとといは、雪がほとんど融けたのをこれ幸いと、 自転車で川辺まで行ったほどなので、 空に冗談を言われている感じ。 そもそも春の…

「NHKラジオ海外マイあさ」にて春のイルクーツクについて

そう厳しいとは感じなかった今年の冬。 あれ、このまま春?という感じがしていたら、 先日雪が降り、今日も雪が降ったりやんだり。 というわけで、今はふたたび純白の雪景色。 でも、晴れ間が見えた時の日差しが明るいので、 雪も春っぽくきらきらと輝いて、…

イルクーツクのグラフィティ おまけ編その3

久々にイルクーツクのグラフィティの話題をば。 ただその前に一つ、お知らせです。先日刊行された拙著『中国 古鎮をめぐり、老街をあるく』の重版が決まりました。 いろいろな形で本書の出版、販売を支えてくださった皆さんに、心から感謝の気持ちを捧げます…

古鎮・老街 補記4 聖なる古樹の村-広西・黄山編

このたび亜紀書房より出版された拙著『中国 古鎮をめぐり、老街をあるく』の補記、その4です。 何でも来いの頼もしさ、古樹にかける俗世の願 古樹にまつわる記憶を、もう少し書いてみたい。 ちょうど今から10年余り前、広西チワン族自治区にある大蘆村とい…

古鎮・老街 補記3 聖なる古樹の村-北京密雲編

このたび亜紀書房より出版された拙著『中国 古鎮をめぐり、老街をあるく』の補記のつづきです。 伝説に守られた聖木 北京で最古の樹齢を誇る木があると聞き、ある日、密雲県の新城子という村を訪ねた。北京と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは大都市のイ…

イーヤ川の氾濫

こういうことは、やはり早めに書いた方がいいと思うので、まだ詳しい情報は集まっていないので恐縮だが、知っている範囲で記しておこうと思う。 実は今、イルクーツク州の一部で川が氾濫していて、ニュース報道を見る限りでは、被害はかなり深刻だ。 イルク…

イルクーツクは川の街

イルクーツクは川の街でもある。 そもそも、名前の由来が、アンガラ川の支流であるイルクート川だ。 イルクート川は、イルクーツクの街の中心部に寄り添うように流れるアンガラ川の途中から、そっと、控えめに始まる。 バイカル湖から流れ出る唯一の川である…

さようなら、プーフ

先週、ようやく綿毛の季節が終わった。 同じユーラシア大陸にあり、気候にも近い点があるからだろう。北京の春の風物詩だった柳絮や楊絮、つまりポプラ科の木々が放つ綿毛状の種は、イルクーツクでも盛んに飛ぶ。 街路樹や、イルクーツクを守るように街の周…

シベリアのさくら

ただでさえ毎年、遅めにやってくるイルクーツクの春。 今年はさらに「寒い春」といわれ、春らしくなったと思ったとたん、 5月末なのに雪がちらついたりした。 だが、6月も中旬になると、春満開。 そして、今はもう夏に向けてダッシュしていて、日中は扇風機…

川に還ったエディク

イルクーツクの下町育ちでありながら、一生をアンガラ川の漁師として過ごしたエディク。 今の伴侶である画家のスラバの幼友達で、小さな頃、よく川で一緒に泳いだと言う。 そんな彼がある日、私たちの結婚を祝って漁のためのボートでミニ船旅をさせてくれた…