イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖 written by Asami Tada ©2019多田麻美

バイカル湖岸鉄道をめぐって――「シベリア・イルクーツク生活日記」を更新 

集広舎のサイトに連載中の「シベリア・イルクーツク生活日記」に、

先回訪れたバイカル湖岸鉄道について書きました。

私自身は鉄道マニアではなく、もしどこかに行くとき、

そこに鉄道で行けるのであれば嬉しいな、という程度のファンなのですが、

この鉄道はいろんな角度から楽しめるので、興味がつきません。

とくに、トンネル内に出る幽霊というのが、気になりました。

白い馬がひづめでレールをコンコンと叩くのだそうです。

懐中電灯で前を照らさないとレールにつまずきそうになるような暗闇で、

馬の鼻息やコンコンという音が聞こえたら・・・

きっと忘れられない旅になることでしょう。

イルクーツクの奇景シリーズ その2

地球上のどこにいても、子供用の遊具を眺める時間は、

私にとってひそかな憩いのひととき。

でも、夏の余香が残るアンガラ川沿いで先日見つけたこちらは、

遊具というより、ちょっとした建造物。

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アンガラ川にそのまま浮かべられるんじゃないかとか、

空気が急に抜けたらみんな転げ落ちちゃうんじゃないかとか、

門の奥のボートはいったいどこに浮かぶつもりなんだろう、とか、

妄想入りの疑問を抱けばきりがないが、

きっとポイントは、ふわふわなのに象が軽々と上に乗ってる反逆&倒錯感。

「100人乗っても大丈夫!」の何とか物置などとはまた別の、

ちょっと飛んだ次元にあって、

何だか愉快。

 

 

イルクーツクの奇景シリーズ その1

これから年末にかけて、かなり忙しくなりそうなので、

しばらくは、寄稿や出版、出演などのお知らせを除き、

ぱらぱらっとシリーズの形で更新させてもらいます。

 

まずは、散歩中に見つけたイルクーツクの奇景シリーズ

その1

屋上庭園つきシマシマ廃屋

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じつは、

廃屋じゃなくて人が住んでいるかもしれないのがまた、

イルクーツクの奥深いところ。

 

 

 

 

NHKラジオ「海外マイあさだより」でロシアの風習について

2日ほどインターネットがつながりにくい場所にいましたので、事前にお知らせできず、恐縮です。

今朝のNHKラジオの「マイあさ!」という番組の「海外マイあさだより」というコーナーで、

ロシアの習慣についてお話ししました。

以下の聞き逃しサービスで、5時40分台から聴けるようです(配信は8月29日(土)の午前6:50まで)。

https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_06_1473363

 

 ちなみに、風習と言えば、こちらには言霊信仰というか、

縁起の悪いことは口にしないに越したことはない、と思う人が多いようで、

うっかり「起きてほしくないこと」を口にしてしまったとき、

プッブッと言いながら木でできたものを3回、指でたたいたりします。

何度も見ているうちに、私もついやってしまうようになりました。

 

確かに、ポジティブシンキングでいることは大事ですが、

うっかり悪い予想をし、例えば

「もし、事故が起きたら……」

「もし、病気になったら……」

などと言ってしまっただけで、

怒られたり、「プップッ」を繰り返したりしなくてはならないのは、

時に、ちと面倒。

それに、最悪の状況を想定した上で、「そうならないように」動くことは、

場合によっては、とても大事だとも思うのです。

でも「かくかくしかじかのリスクを回避するために、このような対策をとろう」

という論議をするとき、

こちらではとても注意深く言い方を選ばねばなりません。

 

郷に入れば郷に従えと言いますが、

やはり実践には気合がいります。

 

集広舎のウェブサイトに「近くて遠い外国」

集広舎のサイトの連載、「シベリア・イルクーツク生活日記」が更新されました。1980年代のソ連と外国というテーマはまだまだ掘り下げられると思うので、いつか続編を書くかもしれません。shukousha.com

 

あぶらであっぷあぷ

最近、あぶらとのつき合い方についてよく考える。

一般的には、あぶらってあんまり体によくない、と思われているけれど、

悪者扱いばかりしていたら、ロシアに住むのはちょっとたいへんだ。

 

いや、料理に炒め物が多い中国でだって、

あぶらとつき合うのはたいへんなのだけれど、

中国には、さまざまなタイプのさっぱりおかゆや、安価な果物、

そしてミルクなしのお茶など、ちょっと胃を一休みさせられる

「あぶらレス」な飲食物がある。

 

でも、ロシアにはそれがほとんどない。

おかゆだって、まず牛乳を沸かし、穀物と砂糖、塩を入れて作る。

仕上げにはバターまで入れる。

 

最初にその作り方を教わった時、

「胃腸の調子が悪い時はおかゆを食べるべき」という、

それまでの自分の常識は、いっきにガラガラと崩れ去った。

 

夫のスラバなどは、油なしのスープも苦手な模様。

ボルシチにスメタナやマヨネーズを入れるのに慣れ切っているせいか、

味噌汁にもマヨネーズをがばっと入れる。

初めて見た時は、思わず悲鳴をあげてしまった。

 

 

辛い物や濃い味のものはあまり食べず、

おおむね、やさしい味が好まれているように見えるロシアでも、

そのやさしい味の後ろには、

「こってりあぶら」が期待されているのだ。

 

冷菜だって同じ。

サラダにせよ、あえ物にせよ、

油なしのものはほとんど思いつかない。

箸休めのような役割の一品として用意する、

刻んだキャベツやにんじんだって、あぶらで和える。

 

サンドイッチもバターこってりのことが多く、

ごちそうとされているイクラのオープンサンドにしても、

かわいらしく並ぶイクラの下にはたいてい、

ふっくらとした座布団のように、

バターが厚く敷かれている。

 

やっぱり、私もここは腹をくくって、

「アザラシ」を目指すべきなのだろうか。

たっぷりと蓄えたあぶらで、寒い冬を乗り切るアザラシ。

筋肉より、皮下脂肪で勝負のアザラシ。

 

でもたとえ、立派なロシアンアザラシになって、

ロシア料理のあぶらの海、バターやサラダ油や乳脂肪の海を

わが海とばかり、自由気ままに泳ぎ回れるようになったとしても……

 

重油の海は泳ぎたくない

どんなことがあっても

 

こんなわがままを言うのは、本当に本当に申し訳ないけど、

「あぶらの海」に想像をはせていたら、

ニュースを聞いて以来、どうしても心の隅から追いやれない、

心痛む風景が思い浮かんでしまった。

 

もちろん今回の重油流出はあくまで「事故」で、

わざとではないわけだけれど、

「千トン流出」って、想像を超える!!

千リットルじゃなくて、千トン!!!

 

便利で快適な文明社会を維持するためとはいえ、

無辜の大自然に、ここまで大きなリスクを背負わせていたとは。

重油の海で生きるなんていう、過酷な環境を、

何の罪もない海洋生物たちに強いている人間って、

やっぱりすごく残忍な生き物だ。

 

石油に頼らない世界を作るのが一番だが、

私にできることって、あるんだろうか。

将来、丸々と肥えたあざらしになった私から

たっぷりあぶらを搾りとってもらったとしても、

そんなのじゃぜんぜん足りない(涙)

 

 

 

お誕生日は人生のお祭り

フェイスブックとかぶって恐縮ですが、

先日、スラバの誕生日パーティー&コンサートがあったので、

その様子をビデオに編集してみました。

鮮度の関係で、時間があまりかけられなかったので、

至らない点が多かったり、素人臭かったりして恐縮ですが、

途中に当日の写真もはさんであります。

ガイド役は、どこからともなく現れた、かわいい犬です。

youtu.be

ライブ形式になることは、前日くらいに決まったので、

ミュージシャンの方々は、みな事前に集まっての練習や

リハーサルなどはしておらず、持ち歌以外は本番勝負です。

 

みんな早々に酔っぱらってしまったうえ、

のどの調子が悪そうな方もいましたが、

それでも熱心にライブを繰り広げてくれ、

しみじみ、一瞬のうちに仲間の音をつかみ、

それに合わせながら即興で演奏できるのって、

素敵だなと思いました。

 

みんな、コロナウイルスのことなど、どこ吹く風、

というのが心配ではあるけれど、

会場になったのはわりと広い空間でしたし、

感染によって生死の境をさまよい、遺書まで残した後で回復したという、

重鎮ミュージシャンも、さすがに演奏は無理でしたが、

顔を出してくれたりして、ホッとしました。

 

ロシアの文化では、大人になってからも誕生日はとても重視するようで、

親戚や友人を家に招いて、大々的にパーティを開いたり、

反対に「今日は俺の誕生日だから一緒に祝おう」と、

友だちの家にお酒や食べ物を持ち込んだりして、

けっこう派手に祝います。

 

最終的な参加人数は事前に特定できないことが多く、

来ると言っていたのに、来なかったり、

来られないと言っていたのに、ふらりと現れたり、

思いがけず、家族や友人を連れてきたり、ということもしばしば。

 

今回、スラバの誕生日に集まったのも、数えるのに成功しただけで22人。

もちろん、とても嬉しく、ありがたいし、

すでに私もこういう状況には慣れてきてはいるのですが、

事前の予測は10人くらいかな?という感じだったので、

裏方としては、けっこうハラハラドキドキ。

 

ロシア発のチェブラーシカというアニメのテーマソングでは、

誕生日のプレゼントにエスキモーアイスをもらうことなどを

夢見ているワニのゲーナが、

「残念ながら(ク・サジャレーニユ)、誕生日は、一年に一度だけ」

と歌ったりしますが、私はそれを内緒で替え歌にして、

「幸いにも(スラバ・ボーグー)、誕生日は、一年に一度だけ」

とこっそり歌っていたのでした。