イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2024多田麻美

ユーラシア後ろ歩き更新のお知らせと、暖冬のシベリアと、市場の人魚

まず、Roadsiders' weeklyに連載中の「ユーラシア後ろ歩き」が更新されました。

今回も、聖俗まじりあった、混沌の旅です。

 

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私生活の方では、一時帰国を終え、年明けにふたたびイルクーツクへ。

恐る恐る予測していた通り、その温かさに驚く。

雪も浅めだし、気温もマイナス10℃以内。

頭がキーンとするような寒さを期待していたので、拍子抜けするが、

ちょっとした散歩には好条件。

それにしても、シベリアが暖冬なんて、地球的にはかなり怖い。

北極海が世界の主要な航路になる日も、確かに近いかもしれない。

 

そんな不安のなか、急務だった、

ロシアでの滞在資格の取得に成功。

 

ほっとしたのもつかの間、窓口の人から、

さらに「居住地の登録」とやらをせねばならぬと告げられる。

 

「登録を一週間以内にやらなければ、罰金と強制送還!」

とひどく脅されたので、心は焦るが、

どこで何をすればいいか、いまいち分からない。

デタラメに探した結果、

2度ほど無駄足を踏み、げんなりする。

 

暖冬とはいえ、道路などは凍っているから、移動は楽ではない。

でも昨日、窓口の要求通り、家族を呼び、書類も集めて、何とか登録終了。

あとは1週間後に預けてあるパスポートを取りに行くだけ(だと願う……)

 

面白かったのは、居住登録をする場所が、ごく普通の市場の中にあったこと。

「市場の中だよ」という説明に、半信半疑のまま、

ごく庶民的な市場の中を先に進むと、果たして市場と同じ建物の奥にあった。

 

ついさっきまでは、生肉とかパンとか乳製品とかを売るブースが並んでいたのに、

この広い部屋に一歩入ると、窓口とコンピューターがずらり。

そのギャップは、結構、印象的だった。

生活に必要不可欠という点では、どちらも同じなのだけれど。

 

日本で、公的文書を扱う役所が生鮮市場の中にあるなんて、

あまり考えられないことかもしれないが、

ロシアでは場所を巡る思考が柔軟なのか、はたまた

生鮮食品を扱う場所なら人が立ち寄りやすいだろうと考えるためか、

そう不自然とは見なされていないようだ。

以前訪れた、同じ機能をもつ役所も、

ショッピングセンターの中の、大型スーパーの隣に位置していた。

用事を終えた帰り、

そういえば、中国でもラーメン屋のあった建物が病院になったりとかして、

「場所柄」の垣根が低かったなあ、と思い出しながら市場を歩いていると、

魚介類売り場で人魚とご対面。

ん?

古い知り合いに会ったような気がするのはなぜだろう?

すぐに思い出したのが、北京で見かけたオブジェ。

確か渤海の海産物のフェアの宣伝用だった。

asamitada.hatenablog.com

 

人魚は海鮮じゃないはずなんだけれど、

それにロシアの人がこれを見て思い浮かべるのは、

死んだ女性の化身とされるルサールカで、一応妖精とはいえ

つまりは幽霊のような存在なのだけれど、

そんなのはどうでもいいことなのだろう。

 

水と関係があって、可愛かったら、すべて良し!

日本だって河童と海鮮は仲がいいもんね。

 

 

 

 

明日の朝、NHKラジオ『マイあさ!』に出演&滑り込みの紅葉狩り

取り急ぎお知らせです。

だいたい2か月に一度ほど出演の機会をいただいている

NHKラジオ『マイあさ!』の

海外マイあさだより」というコーナーで

明日、土曜の朝も、恐らく5時40分台から

おしゃべりさせていただきます。

テーマは、ジェットコースターのような気候と
予想される(さまざまな意味における)「冬の寒さ」について。

 

そもそも、この出演のご報告も「滑り込み」ですが、

以下の写真は、

文字通り、「滑り込みセーフ」だった紅葉狩りの風景。

先日訪れた、浜松市北部の天竜二俣という町の公園にある、

名物滑り台ですが、

紅葉の間を颯爽と滑ることができ、

樹木と高い所が好きな私は大満足。

 

現在、クリスマスと新年の

お祝いムードたっぷりの展示をしている

「マルカワの蔵」

もそうですし、

その後訪れた、日本一の大きさの木彫りの大黒様

もそうですが

天竜はやっぱり見どころがけっこうあって、

奥が深い。

 

いつかゆっくり

山の木々の間や通りを歩くように、

文章に綴ってみたいです。

「ユーラシア後ろ歩き」更新と遅ればせながら『究極の学び場 京大吉田寮』刊行のお知らせ

 まず最初に、

ROADSIDERS' weekly .に連載中の「ユーラシア後ろ歩き」が更新されました。
早くも第21回です。

「後ろ歩き」の旅は、つねに過去へと遡りつつも、

主人公は一応、前に進んでるんですが、

心がちょっと後ろ向きになってしまう時もあるようです。

 

ところで、年の瀬も近づいてからのご報告となってしまい恐縮ですが、

実は今年の5月に、私も執筆者として参加したアンソロジー本が、

一冊刊行されています。

書店に並んだ頃、私はイルクーツクにいたので、

ご紹介のタイミングを逃していました。、

遅ればせながらご紹介すると、こちらです。

www.hanmoto.com

 

吉田寮は、私が学生時代に2年間ほど住んだ学生寮で、

現在は現存する日本最古の学生寮といわれています。

その建物や文化の保護活動に興味があったこともあり、

これまで、京都に行く機会があるたび、訪れてきました。

 

スラバも、古い建物が好きなので、強く印象に残ったらしく、

吉田寮を訪れた時の印象を、鉛筆画や水彩画の形で残していました。

このたび、そんな私たちの吉田寮への思いが、

アンソロジー本への参加を通じて形になったことを、

とても幸運に感じています。

 

少しまじめな話をすると、

私にとって寮生活は、自治、自由、社会などの概念について、

どうあるべきかや、そこにどうコミットすべきかについて、

まじめに考えるきっかけをくれた場だと感じています。

今回出た本にも、私以外の方の文章から、

その各自各様のプロセスが伝わってきて、

改めて貴重な場にいたのだと思いました。

 

また、少しふまじめな話をすると、

私自身はとくに深く

寮の自治に関わっていたわけではないのですが、

寮内に文化関係の活動を行う、文化部という部門があり、

そこに所属していました。

 

役割は単に、寮の図書室にある本の文章を読み、

留学生たちのために漢字にルビをふったりするだけ。

ただ、なぜか一期だけ私が「部長」に任命されたことがありました。

 

とくに目立つことをしたわけではありません.。ただ、

「文化部(部)長」という肩書は、

中国では文化庁長官のような意味をもつので、

「わたし、文化部部長だったことがあるのよ~」と、

中国滞在中、時々ジョークの種として、使わせてもらいました。

すみません、文化部。

 

久々に記事更新

まず最初に、久々に集広舎のコラムを更新しました。

地方選挙をめぐる所感|集広舎

あくまで生活者の視点からの記事ですが、

ただの生活者でさえ、これだけびっくりできるのだから、

内部にいる関係者だったら、

もっとあれこれ、びっくりさせられていることでしょう。

 

今回の体験の後は、

民意調査の結果とか、いろんな統計とかも、

かなり疑いの目で見てしまいそうです。

 

棟上げ式の餅まきなら、

ばらまくことで安心、安全が得られるかもしれませんが、

こんなばらまきで得られるのは、

むしろ不安と崩壊の前兆では?

 

戦術的には、現状では本音の主張ができない野党が、

まずは勢力を得る手段として

ばらまいたというのもあり得るのでしょうが、

そんな韜晦とセットの買収は、

少しでも「出る釘」になったとたん、

攻撃材料にされるだけでは?

 

どれもこれも、ロシアのマスメディアがまともだったら、

反撃だってできるのでしょうが、

それがまた絶望的なところ……

 

 

「めぐる景色」展、無事開催中&「ユーラシア後ろ歩き」更新のお知らせ

ご報告が遅れてしまいましたが、

スラバ・カロッテの展覧会、おかげさまで無事開幕し、

第一回目のトークも終えることができました。

 

無事終えた、と言えればいいのですが、浜松の交通事情にまだまだ疎いため、

会場への到着が遅れてしまい、ご迷惑をおかけしてしまいました。

 

会場のグレースガーデンでは、障がい者の方々が料理を作っているのですが、

主力メニューであるカレーやカツサンドがとても本格的で美味しい上、

コーヒーを手にくつろぐこともできるので、

お茶や食事ついでにご来場いただければと思います。

 

私の方は相変わらず、こまごまとした雑用や

絵に興味を持ってくださる方々とのおしゃべりに明け暮れ、

会場の写真さえまだちゃんと撮れていませんが、

先回と同じく、スラバの展覧会や作品が結んでくれる貴重な縁に、

毎日のように感謝しています。

 

また先日、一つ嬉しいことがあり、

スラバがやっと3年滞在できるビザを獲得しました。

シベリアとの間を行き来する生活は変わりませんが、

少しずつスラバの日本での活動の基盤ができていくようで、

励まされました。

 

一方、私がRoadsiders' weekly(有料メルマガ)に連載中の

『ユーラシア後ろ歩き』も、

無事更新されていて、

昨日、第20回目が掲載されました。

 

今回登場する、色丹島の魚の缶詰工場、

訪ねてみたいような、みたくないような。

 

昔、北京で出会ったおじさんも、

鶏肉工場で働いた後は、

鶏肉を一切食べられなくなったと言っていました。

私もそこで働いていたなら、きっと同じでしょう。

となると、気持ちは複雑です。

 

殺生のことを考えると、自分の無責任さに何も言えません。
刺身や焼き魚を食べようと、サプリで魚の栄養分を得ようと、

工場で大量の魚を処理しているのは同じ。

 

私は目をつぶっていられるけど、

情況的にそれができない人もいる。

 

私にできるのはせいぜい、

工場で働いている人に感謝しながら、

無駄な殺生はできるだけ避けよう、

いただいた命は大事にしよう、

と胸に誓うだけです。

 

それでもやはり、大量生産、大量消費というのは、

どこかにひずみや無駄が生まれるもの。

 

もちろん、震災や遠征などでは缶詰が大活躍するわけですが、

普段の生活であればやはり、

釣り人が、最低限必要な分だけ釣った魚の方が、

美味しいことも確か。

 

恥ずかしいことに、

私は釣りも狩りもできない、

「食べるだけ」の人なんですが……

 

 

 

 

スラバの個展 Scape Go Round 準備進行中!

あれこれ移動や新しい用事でバタバタしていたので、

しばらく更新が途絶え気味で申し訳ありません。

 

今、本業の他に何をしているかというと、

スラバの展覧会の準備です。

 

肝心の案内状が、先日出来上がりました。

スラバ自身の提案で、敢えてちょっとレトロな感じに仕上げてみました。

今回は、ビートルズを描いた大型の新作や、

バイカル湖の風景を描いたモノタイプも並びます。

 

会場のグレースガーデンは、

聖書のことばに基づいて障がい者の就労支援と生活支援を行うNPO法人、

トータルケアセンターが運営する

「心と体が喜ぶヘルシーカレー&カフェレストラン」

です。

 

私自身も障がい者で、就労の問題には頭を痛めたことがあるので、グレースガーデンさんの活動を心から尊敬し、また応援したいと思っています。

 

名物のカレーは本格的な味わいでとてもおいしいですし、

お店も気楽に入れる雰囲気で居心地も良いので、

浜松近辺にお住まいで、興味をお持ちの方はぜひいらしてください。

11月の15日と29日には私たちのトークも行われます。

 

スラバの作品やプロフィール、および作品関連グッズについては、

こちらをご参照ください。ショップに関しては、近々新作グッズも並びます。

slavacarotte.com

slavacarotteshop.com

NHKラジオマイあさ!への出演と「ユーラシア後ろ歩き」更新

事後報告になってしまって申し訳ありません。

先週土曜朝のラジオマイあさ!で、

イルクーツクの動物事情についてお話ししました。

およそ45分目から始まります。

プレーヤー | NHKラジオ らじる★らじる

配信は19日(土)の午前5:55までです。

 

なお、都築響一さん主宰の

ROADSIDERS' weekly .

(有料)に連載中の「ユーラシア後ろ歩き」も、更新されました。

水の中に広がる林、夢のような世界です。

いよいよロシアも主要な舞台となっていきます。