イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

NHKラジオのマイあさラジオでお話しました

あさっては正教会のイースターにあたる、パスハ。

そこで、ここ数日は恒例の大掃除をしたり、

卵を染めたり、お菓子を用意したり、で大忙し。

 

ほかにもここずっと個人的な用事がいろいろあって、

その多くが、役所などでの手続きにまつわる、こまごまとした、

つまりは自分には至って苦手なジャンルのことでした。

最初は暗闇を手探りで進むような感じでしたが、

前進するうちに、だんだんとロシアのお役所の仕組みなども分かってきて、

勉強になったり、こちらで暮らしているという実感につながったり。

 

そうやって見えてきたことの一部を、

今朝、NHKラジオのマイあさラジオという番組でお話しました。

何せバタバタしていたので、お知らせが遅れてしまってすみません。

「聞き逃しサービス」でしばらく聴けるかと思います。

www.nhk.or.jp

恐らく、朝5時46分くらいから始まります。

配信は、5月8日(土)の午前4時55分までのようです。

 

 

『シベリア・イルクーツク生活日記』を更新

集広舎のサイトに連載中の『シベリア・イルクーツク生活日記』が更新されました。

第10回

新型コロナ対策をめぐって

『スプートニクV』の接種時の様子も記しています。

高校時代に地学部天文班の部員として毎日空を見上げ、

ソ連のSF映画のファンでもあった者としては、

必要性にかられてというだけでなく、

ワクチンの名前そのものにも逆らい難い魅力があったことを、

正直に告白せずにはいられません。

ちなみに、その日は歯医者でも奥歯を2本抜いたので、

友人たちとの集いがあったにも関わらず、

「食うな呑むな」の一日となりました。

『まいにち中国語』のテキストに新連載

4月の頭は新学期が始まる季節、という感覚は、

海外に長く住んでいるとどうしても、

記憶の彼方に遠のいていってしまうのですが、

 春になると、気を引き締めて、やりたかったことをちゃんとやろう、

という気持ちになれるのは、

やはり春に新学年を迎えていた習慣の名残でしょうか。

 

そして何より忘れてはいけないのは、

春は新連載が始まる季節でもある、ということ。

NHKラジオの『まいにち中国語』という番組のテキスト

長らく連載させていただいているエッセイ、

今年の春は、16年半北京に住んだ経験をもとに、

『北京暮らしで見てきたこと』

という連載を始めさせていただきます。

(試し読みではエッセイまでたどりつけなくてすみません)

 

イルクーツクに来てからも、時々見に行きたいと思っていた中国の変化。

ここ1年余は新型コロナの流行のために、実現が難しいままですが、

幸い北京の友人たちが時折、北京の風を届けてくれます。

いい変化も、あまり歓迎できない変化もありますが、

北京はやはり、大事な心の故郷のうちの一つです。

 

また、こちらの中国料理の食材店やレストランには、中国北方出身の人が多いので、

時おり北京語が使えるのも、ありがたい限り。

コロナ禍によって来れなくなったり、帰れなくなったりした中国系の人々は

たいへん多いようで、あるハルピン出身の女性も、

故郷になかなか帰れないことを嘆いていました。

「今、飛行機でハルビンに帰ろうと思ったら、モスクワ、アブダビ、北京を経由しなくてはならない。そんな、地球を一周するみたいな航空券、高すぎてとても買えない」

とのこと。

そりゃ確かに大変だ……。

 

そんなわけで、ロシアー中国間はまだちょっと遠いままの毎日ですが、

この連載を通じて、中国の暮らしが

より多くの人にとって身近に感じられるようになることを

心から願っています。

 

国際女性デーを機に女性のアートを回顧

『ARTSCAPE』の「FOCUS」欄に投稿した拙文が掲載されました。

 

artscape.jp

 

まだまだ気の抜けない毎日ですが、

春の到来と合わせるように、展覧会が活発になってきたことは、やはり嬉しいです。

 

生の作品を観られる喜びがありありと感じられるようになったのは、

いわばコロナ禍のおかげ。

 

つらい病気の治療が終わり、痛みなども治まった後、

健康に過ごせる毎日のありがたさが倍増するのと、

ちょっと似ているかもしれません。

 

バイカル湖の上に立つ

少し前の事になってしまったが、

3月上旬に、かねてからの願いが叶い、

冬のバイカル湖の上に立つことができた。

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世界最深の湖の上を自分の足で歩くなんて、

チベットでチョモランマの頂を見上げた時くらいの感動だ。

 

もちろんチベットで、ヒマラヤ登山用のベースキャンプまでしか行けなかったように、

バイカル湖でも、湖のもっとも深い場所の上に立てたわけではないのだけれど。

 

ベースキャンプからチョモランマの頂を観た時、

そもそもベースキャンプ自体が

標高5200メートルというかなり高い場所にあるので、

チョモランマの頂が意外と近く見えることに驚いた。

 

ベースキャンプから山頂を見上げると、

標高8848メートルのチョモランマも、

富士山をふもとから見上げるような感じなのだ。

登ろうと思えば登れるんじゃないか、と思ってしまうほど、

その頂は近く見えた。

ほんとうはそんなはずないのに。

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バイカル湖の広くて深い湖水も、

いざその上を歩いてみると、途方もなくツルツルしていて危なっかしいものの、

何だかふとそのままどこまでも歩いて行けそうな気がした。

 

もちろん、こちらも想像の世界での話だ。

寒い季節だと、普通の装備では凍えるだろうし、

暖かくなった頃だと、氷が薄くて危険だ。

実際、私が行った時も、

アンガラ川の河口のあたりは、すでに氷が溶けていた。

 

ピークは時に、たどりつくのが簡単そうに見えたりする。

でも、実際はピークが見えてからがなかなかたいへん。

そういうことって、人生ではよくある。

 

それにしても、広々とした凍った湖面と遠方の山を見渡していると、

南極にいるような錯覚に襲われる。

もちろん、南極はおろか北極にさえ行ったことはないのだが、

『南極物語』から映画館体験が始まった映画ファンとしては、

氷のかたまりをばらまいて、ペンギンを連れてきたら、

南極を舞台にした映画のロケに使えるんじゃないか

と、つい勝手に盛り上がってしまった。

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黒澤明の名作、『デルス・ウザーラ』では、

主人公たちが川面で道に迷った時、

吹雪の中、必死で藁をかき集めて夜を明かすが、

バイカルの湖面には本当に文字通り、氷しかない。

つまり、タローとジローのサバイバルを追体験するのに、

ここほどうってつけの場所はないわけだ。

 

さらに興味がつきないのは、見えそうで見えない湖の下。

バイカル湖版ネッシーの伝説は気になるし、

財宝が沈んでいるという話も聞く。

脚本家のヴァンピーロフなど、

バイカル湖で溺死している人も多いことを思うと

幽霊さんもいろいろと、いらっしゃるかも。

世界最古の湖というのが本当なら、霊のバラエティも豊富なはず。

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でも、ダイビングして確かめたいかと言うと、いや、

謎は謎のままが面白いんじゃ?と思ってしまう。

寒がりの言い訳というのも多分にあるが、それだけじゃない。

未知の世界、空想を誘う、手つかずの世界が、

地球上にまだまだたくさんあっていいはずだから。

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もちろん、バイカル湖の水質の悪化が問題視されている昨今は、

「そのままに」という願いさえ、

ぜいたくで独りよがりなものではあるのだけれど。

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まだまだ気になる災害と街の関係―‐集広舎のサイトのコラムを更新

集広舎のサイトに連載中のコラム『シベリア・イルクーツク生活日記』を更新しました。

火事の記憶が決めた街並み

大震災後の東北地方を訪ねた経験も思い起こされ、

大災害と街の関係について、ふたたび考えを巡らす機会となりました。