イルクーツクの下町育ちでありながら、一生をアンガラ川の漁師として過ごしたエディク。
今の伴侶である画家のスラバの幼友達で、小さな頃、よく川で一緒に泳いだと言う。
そんな彼がある日、私たちの結婚を祝って漁のためのボートでミニ船旅をさせてくれた。
夜、モーターを全開にして、くるくると川面を旋回。すると、アンガラ川にかかる橋の明かりもぐるんぐるんとめぐった。
その時のエディクの、どうだ、面白いだろう、という得意げな顔が忘れられない。
そんな、貧しいながらもちゃんと働き、堅実に暮らしていたエディクが、
先日幼馴染に殺されてしまった。
その風のたよりを耳にしたのが、これまたアンガラ川のほとり。
こちらに住んで1年半ほどの間、いろいろな人の最期を耳にしたけれど、ここまで悲惨な知らせは初めて。
殺され方も、これ以上のケースには一生巡り合わないであろうというほどの残酷さで、
本当に起きたことなのかさえ、なかなか信じられなかったが、
ただ一つ、信じられたことがある。
それは、エディクはきっと今もアンガラ川にいるんだ、ということ。
そして、エディクは大事なことを教えてくれた。人生は短い。
今やれることを精いっぱいやらなきゃだめだよ、と。