ただでさえ毎年、遅めにやってくるイルクーツクの春。
今年はさらに「寒い春」といわれ、春らしくなったと思ったとたん、
5月末なのに雪がちらついたりした。
だが、6月も中旬になると、春満開。
そして、今はもう夏に向けてダッシュしていて、日中は扇風機をつけたくなるほど。
そんな調子なので、遅くなりすぎないうちに、春の花について記しておかねば。
まず、春のイルクーツクで、日本の桜、北京の花海棠を思わせる華やかさをまとっているのは、りんごの花。
りんごと言っても、姫りんごのような小さな実しかつけないのだそう。
同じく純白色の爽やかさが印象的なのは、こちらの人がチェリョムーハと呼ぶ花。
日本での正式名称をエゾノウワミズザクラといい、調べてみると、品種的にはサクラの一種らしい。
この花は、イルクーツクのあちこちで見かける。
シベリアでも桜の仲間とあちこちで出会えるのかと思うと、何だか嬉しい。
最後に、その花の香しさがもたらす存在感、そして「春まっさかり」という祝祭感を強く身にまとっているという意味で、シベリアのさくらともいえるのは、やはりライラック。
満開の時はけっこう迫力がある花だが、目のあまり良くない私にとっては、花より香りの方に先に気づくことが多い。
ゆえに、満開の時期にイルクーツクを歩くと、時折、香りに鼻をくすぐられ、立ち止まって辺りを見回したくなる。
この他にも、桃やツツジの一種など、親しみ深い花は多く、タンポポに至っては、街中、郊外を問わず、いたるところで咲いている。
実は去年の春もイルクーツクにいたのだが、いろんなことで慌ただしくて、花をゆっくり眺めたり、名前を調べたりする余裕がなかった。
でもこれからは、新たにつぼみが開くのを見るたび、これまでここで過ごした春を思い出し、時の流れを実感するようになるのだろう。