先日、新しい足が来た。
つまり義足ができた。
義足を着ける前と着けた後で、
近所で時々会う人の反応が違うんじゃないかと思ったが、
あっけないくらい何の反応もない。
足を見て、「おっ」と言われたら、
「いやあ、じつは生えて来たんですよ」
と冗談を言おうと楽しみにしていたのに、その機会はまだない。
こんなの、人生で一度あるかないかの機会なのに……
と、そんなどうでもいいことは置いておいて、
ここずっと面白く思っているのが、
人生で初めて、温帯気候の冬を過ごしている、
シベリアっ子の夫の反応。
家の中では寒がってばかりいるのに、
外に散歩に出ると、10度を切る温度でも、
「まったく楽園だ」
「暑いぞ!」
「もう初夏みたいだ」
などと、嬉しそうに言っている。
そういう感想ばかり聞いていると、
自分まで常夏の国にいるような気がしてきて、何だか愉快だ。
私が、零下20度なんて当たり前の
シベリアの冬を最初に過ごした時と同じくらいの驚きを、
きっと今、味わっているのだろう。
シベリアっ子にとっては、
冬に家の庭でみかんが実っていることはもちろん、
冬に外で花が咲いていることも、
かなりびっくりすることなのだ。
でも静岡県人としてはそもそも、
庭にみかんがなっているだけで、
「おおおー」と驚かれること自体が、
けっこうな驚き。
とはいえ、物は見よう。
見慣れた温帯の冬を、
冷帯に住む人の目で眺め直してみると、
ひだまりの明るさや温もりが、
ちょっと非日常的にありがたく感じられたりして。
狂ったり、狂わせたりの季節感
カルチャーショックならぬ、気候ショック。
人ってほんと、
さまざまな環境を
さまざまに生きている。