イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

シベリアの冬支度

明日の朝、5時40分台に、NHKラジオの番組「マイあさ!」の「海外マイあさだより」というコーナーで、シベリアの冬支度についてお話しします。ご興味があれば、どうぞ。

冬支度といえば、この間、アンガラ川で見かけたマガモたち。

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彼らも、恐らく冬支度の最中でしょう。

渡る先は、たぶん日本じゃないかな?

小さな体なのに、羽ばたく距離は何ともダイナミック。

ちなみに、このカモたちと出会った11月7日は、革命記念日。

つまり、ボリシェビキが武装蜂起して、権力を奪取した日。十月革命と呼ばれているが、それは当時のロシアがユリウス暦を使っていたからで、現在の暦では十一月だ。

しかも革命が起きたのは1917年だから、すでに100年以上も前なんだ、ということに改めて気づき、しばし気が遠くなる。

ソ連が崩壊してからも、もう30年近くになるわけだが、コムソモールなどに属した記憶がある世代は、まだこの日を祝うのだそう。

というわけで、市内でも、赤旗を掲げた車のパレードや、

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記念の集会が見られ、

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レーニン像の前では、革命歌の合唱も行われていた。

実際は、当時制圧されたのはモスクワ周辺だけで、シベリアはまだ旧体制の下にあったはずなのだが、広大なロシアのこと。どこかで区切りをつけなければならない。

これとは多分関係はまったくないのだろうが、最近、シベリア鉄道をイルクーツクまでひいた功労者、アレクサンドル三世の像に、酔っ払いが車を激突させてしまった。

不幸中の幸いは、鉄の弾丸と化した酔っ払いの命には、別条がないらしいこと。

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鉄道完成の際は、自らも鉄道でイルクーツクを訪れたというほどまじめな皇帝なのに、囲いを壊されてしまい、何だかかわいそう。

でも、レーニンの兄たちにあやうく暗殺されそうになったこともある皇帝が、この時期に思わぬ「弾丸」を被ったのは、何だか因縁めいているかも。

何はともあれ、市民にとって気になるのは、100年前より今日明日。この修復にはきっとすごくお金がかかるんだろう、という噂が、今、市民の気持ちをちょっと暗くしている。