イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

ごみのミュージアムと誤解された絵具の話

いつもぎりぎりのお知らせで恐縮ですが、

明日の朝、5時台のNHKラジオの「マイあさ!」という番組の「海外マイあさだより」というコーナーで、イルクーツクのごみミュージアムについてお話しします。恐らく、5時45分前後に始まります。

 

番組では「作品としての武器」が取り上げられるのですが、

それに因んで武器にまつわる話題を一つ。

 

今回、イルクーツクからロシアの国境を越える際、何度も荷物が検知器の検査にひっかかり、係員に呼び止められた。

どうも元凶は、スラバが「日本では買えない色だから」と画材店で買っては、何本もスーツケースに入れておいた油絵具。

何に間違えられたかというと、どうも薬莢か弾丸の類らしい。

これらをロシアから持ち出されては大変、ということなのであろうが、

持ち出した後、渡す対象にどこが想定されているかは、

もちろんすぐに想像がついてしまう。

 

それにしても、色とりどりの絵具といった、

いかにも無害で平和的に見えるものが武器に間違えられるなんて。

冗談にもほどがある、とつい苦笑い。

 

とはいえ、検査員だって生活がかかっているから必死だ。

同じ空港ですでに2度、3度検査しているのに、さらに厳しく調べる。

 

一方の私たちはすでに寝ぼけモード。

空港に着いたのも、飛行機の離陸も深夜だったし、

ただでも荷物をたくさん抱えての大移動だったので、頭がクラクラしてくる。

 

何てこった、とげんなりするも、今回の道中、後で気づいたのは、

これっぽっちの苦労なんて、ほんの序の口だったということ。

先は、ほんとうに、とっても長かった……

(いつかどこかに続く)

おまけは、

雲の彼方に沈む、引き込まれるような太陽と、

中秋の湖畔にのぼる、澄みきった名月。