平和だった頃に立てた、イルクーツクに戻る計画。
長らく延期を余儀なくされていたが、
やっと何とか戻れそうな目途がついた。
こんな時期になぜ戻るのか、と言われても仕方ないが、
生活者として、向こうに家があり、ペットもいる。
ビザや夫の運転免許などをめぐる手続きも待っている。
今後しばらくは、日本滞在の時間を増やすにしても、
それなりの準備が必要だ。
イルクーツクの友人たちからも、
「今、帰ってくることは勧められないが、でもやっぱり会いたい」
といった連絡がしょっちゅうある。
戦争の当事国の人々と、それ以外の国の人々が、
手軽にSNSでやりとりできてしまう。
今はそういう時代だ。
それだけでも、十分に不思議な感じなのに、
その戦争当事国が、
じつは自分の生活の拠点がある場所だったりすると、
一応、今はまだ平和な国にいるだけに、
何だかリアリティが仮説化されたような、
空間がねじれたような、へんな感じがする。
自分がほんとうはそこにいるはずの場所が、
戦火こそ被ってはいなくても、
けっこう大変な、悪い冗談のような情況になっているのだ。
だがそんな時でも、ユーモアを忘れないのが、
スラバの友人たち。
「さ、砂糖がない!日本から砂糖買ってきてくれ!」
「ロシアに帰ったら、戦場に呼ばれるぞ、インターネットでカラシニコフの使い方、復習しとけ!」
!!!
面白いけど、さすがに笑えない。
実際、砂糖の値段はすでに以前の1.5倍に跳ね上がっているらしいし、
今は一応、50歳を過ぎた者は軍隊には呼ばれないとされているとはいえ、
戦争が長引いたらどうなるか分からない。
お願いだから、一日も早くこれらが、
「笑いとばせる」冗談になる日が戻ってきて欲しい。
もちろん、戦場には、冗談さえ永遠に凍りつくほど、
残酷な現実があるのだけれど。