イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

包帯も適材適所

事情があって、包帯をよく使う。

よく使うので、よく買う。

じつは最初にロシアを訪れたときに驚いたのが、

薬局で売られている包帯の質だった。

 

たいていの品物の質の悪さには動じない私もつい、

これを「包帯」と呼ぶなんて恥ずかしくないのか?

と思ってしまうレベル。

 

何せ、使おうとして巻いてあるものをほどくと、

端がボロボロとほどけてきて、からまってしまう。

へんなところが縫い合わされていて、最後までほどけないこともある。

 

だが、安物には安物の長所がある。

それはあまりにボロボロなので、再利用が無理だということ。

使い捨てるのは心痛むが、手軽だし、衛生的でもある。

 

日本の伸縮包帯だと、こうはいかない。

質が良い分、もったいなさすぎて、使い捨てにできない。

衛生面を考えれば、使い回しはあまりよくないのだが。

 

どんなものにも、それなりの価値がある。

大事なのは、適材に適所を与えること。

小さなロシアの包帯を見るたびに、

私はつい、そんな大げさなことを思ってしまう。