イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

イルクーツクの奇景 浜松的ガソリンスタンド編

夫のスラバは、私の実家がある浜松がとても好きだ。

恥ずかしながら、たぶん私以上に。

帰省時、彼と一緒に浜松をめぐることで、

新たに見つかった魅力は多い。

 

ある秋の日、ステッカー大好きのスラバから

「バイクに貼るから浜松の市章入りのステッカーを作って!」

と頼まれたので、

まあ、ロシアで貼るのならいいだろうと思い、

インターネット上の画像を使って作ってみた。

 

でも何といっても市の公式のロゴだ。

アクセサリー的に貼った方が無難だろう、と思ったので、

「貼る場所は一緒に決めようね!」

と釘を刺しておいた。

 

でも、ステッカーができたとたん、

「バイクも洗わなくちゃいけないし」

と言いながらスラバは駐車場へと飛び出していってしまった。

 

その後、ちょっぴり心をざわつかせながらバイクのところに行ってみると、

「わーおー!!」と叫びたくなるくらい不安は命中していた。

ステッカーはバイクのど真ん中に貼られていたのだ。

思わず、

「市の職員の車みたい!!」

と、市の職員がどんな車に乗っているかなんて知らないくせに、

叫んでしまう。

 

でもいたく気に入っているスラバをがっかりさせるのも忍びなく、

そのままドライブへ。

「まずはガソリンを入れよう」

ということで、一番近所のガソリンスタンドに入る。

 

するとまたまた

「あああー!!」と叫ぶことに。

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ガソリンスタンドのロゴと、浜松市の市章がそっくりだったのだ。

どっちが先にできたかは不明だったが、つい、

こんなところにも浜松ファンが??

と何だか得体のしれない縁を感じることに。

 

ちなみに、我が家のバイクは、インターネットで中古車を注文したもので、

送られてきたとき、偶然、

生産地が浜松(正確には浜松に編入される前の可美村)だったので驚いたのだった。

 

はるばる浜松からシベリアの町までやってきた後、

浜松ゆかりの主のもとで、

浜松的ロゴを貼られ、

浜松的?ガソリンスタンドでガソリンを補給されている我らがバイク。

 

イルクーツクの道の状態は正直言ってあんまり良くないけれど、

でこぼこも最近は少しずつ減ってきているので、

ぜひ長生きしてね。