イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

ふくろうはいつ鳴くのか

数日、用事があって北方の農村に行っていました。

その前後、だいぶバタバタしていたため、

先々週土曜日放送分のNHKラジオ『マイあさ!』での出演について、

「聞き逃しサービス」も含め、お知らせする余裕がありませんでした。

ごめんなさい。

放送ではこちらの人々が、

新型コロナの流行によって外出が制限されている中でも、

ユーモアを楽しんだり、適度にストレスの発散をしたりしながら、

それぞれのペースで暮らしていることについて、語らせていただきました。

 

遅れてきた第一波が今、シベリアを襲っており、

数日前に訪れたばかりの村で、

感染者の急増が報じられたり、

直接・間接の知人が何人も感染するなど、

なかなか気の抜けないこの頃ですが、

イルクーツクでは、

今にいたっても、みんなのんびりしたもの。

「マスクつけてないなら近寄るな」と

隣の人に怒鳴っている人などを見たのは、ただの一回だけで、

生活の統制を通じて、全体主義的な雰囲気が醸し出されるなどといった

古い歴史の再現も目立っていません。

 

マスクの着用にしても、ソーシャル・ディスタンスにしても、

各自ができるだけ、できることをすればいい、といった感じなのは、

マイペースな私には、ありがたい限り。

ただ、

感染者が急増していることを無視してでも、

強引に投票を行わせたり、

経済の停滞を恐れて、

なぜ今?というこの時期に

お店などの再開にゴーサインを出したりと、

ちょっと、戸惑う動きもあったりする。

 

 

それはともかく、6月の記憶が遠くならないうちに、6月の話題をば。

こちらでは、夜更かしが好きな、夜型人間のことを、

сова(ふくろう)

と、とても分かりやすい比喩で呼ぶ。

 

学生時代の習慣から長らく抜けきれず、したがって

夜2時以前に寝ることはほとんどなかった私も、

「体が資本」

という言葉の意味がしみじみと分かるようになった最近は、

何とかかんとか

ふくろう生活を脱しつつあった。

 

 だが、6月のロシアでは、夜がとっても短い。

なので、夜型になるつもりがなくても、

夜型になってしまいやすい。

いや、そもそも「夜型」という言葉が成り立ちにくい、

と言った方が正しい。

だって、中旬にさしかかると、夜の10時でも、こんな感じ。

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この日は曇っていたから、空が隠れているけれど、雲の少ない日だったら、

もっと明るくて、夜11時でもこんな感じ。

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街灯が影響しているとはいえ、明るい!!

 

この後、やっと夜のとばりが完全に下りて、さあ、夜だと思っていたら、

3時間後くらいには、もう空が明るみ始める。

だから、ちょっと書いたり読んだりするのに夢中になったりすると、

窓を眺めたら、

すでにもう「翌朝」!

 

ふくろうは一体、いつ鳴けばいいのか。

これはもう、体も脳も、あるがままに任せるしかない。

満月のおおかみ、

夏至のふくろう。