気づいたら、自分のPCのグーグルChromeで自分のブログが開けなくなっていた。
中国で何度もブログのプロバイダー替えをした経験がある私は、
いよいよか、と思って暗澹とした気分になったのだが、
どうもEdgeでは開けるようだし、スマホのChromeでも開ける。
何とも不思議だ。
ところで、今、ロシアで話題の人といえば、もちろんプリゴージンである。
そして何を隠そう、夫のスラバはけっこう、プリゴージンに似ている。
スラバの名誉のために言えば、普段のスラバの顔はP氏ほど怖くはない。
先日など、もう五十代半ばなのに、
近所のおばさんに「あなたかわいい顔ね」と言われたほど。
まあ、「かわいい」という形容には異論もあるかもしれないが、
少なくとも怖くはない。
だが、その「かわいい」と言われることもある顔が、
なぜか疲れていたり、気分が悪かったりするときは、
プリゴージンに似ているのだ。
そのことを最初に口にしたのは私だったが、
友人たちにも言ってみると、
「じつは俺もそう思ってた」と告白する人が続々と現れた。
気づいてはいても、「言うと気を悪くするかも」と思って黙っていたそうである。
皆さん、けっこう気を遣ってくれていたらしい。
ごめんなさい、率直な妻で。
トップレベルの有名人に似ているとなれば、生かさない手はない、
ということで、スラバも、
メディアで一躍有名になったセリフを真似て、
ゆがめた口で「ショイグー!」と叫んでみる。
「そっくり! 」と私が笑うと、調子に乗って
「この一発芸でひと稼ぎしようかな」
なんて冗談まで言い出す始末。
一方、本物のプリゴージンの方も、批判やら抗議やら反乱やらで
知名度を加速度的に高めてくれて、
それがピークに達したと思われる今日、ちょっとした事件が起きた。
たまたま一人で近くのスーパーに行ったスラバ。
すると六、七歳くらいの女の子が近づいてきて、いきなり
「ねえ、あなた、もしかしてプリゴージンじゃない? 」
と尋ねたのだそうだ。
そこでスラバがすっとぼけて
「どうかな? 僕にもわかりません」
と答えると、女の子は
「分かってるわ、プリゴージンでしょ。
大丈夫、隠語で話せば誰にも分からないから」
と神妙な顔で言ったそうだ。
そこまで聞いた私は「隠語なんて言葉、どこで覚えたんだ?」と思ったが、
その子はそうして「隠れるべきプリゴージン」を安心させた直後になぜか、
けっこう大きな声で
「ねえ、ママ! ここにプリゴージンがいる! 」
と母親を呼んだのだそうだ。
もちろん、その子のお母さんは慌ててスラバに近づいてきて、
「すみません」と言い、
「そんなこと言っちゃダメ」と女の子を諫めた。
だが、時すでに遅し。
響き渡った女の子の声は、
すでにスーパーにいた他の人にも十分聞こえていて、
みんな、スラバの方をみては笑ったり、
親指をぐっと突き上げて「ナイス!」という合図を送ってきたり。
善人とは決して思えないP氏だが、ファンは少なくないらしい。
それにしても、さすがプリゴージン、
小さな女の子にまで、顔はおろか、
「やばいことをしちゃって身を隠した方がいい人」
としても知られているとは……
しかし彼、なんでベラルーシでなくて、シベリアにいるんだ?
心が暗くなる事件や話題だけでなく、
フィクション顔負けのドラマチックな出来事も目白押しで、
感覚がおかしくなりそうな今日この頃だが、
この時ばかりは、女の子が見せたであろう、神妙な顔つきを想像して、
久々に大笑いした。
でも、可笑しさがこみ上げるとともに、
ちょっぴり悲しい気分にもなった。
子供たちが、妖精でも魔法使いでもスパイダーマンでもなく、
プリゴージンなんかに、
無邪気で貴重な空想の力を費やす世の中になるなんて。
それに、子供が反戦の絵を描いただけで、
親が逮捕され、子供も孤児院に送られたりする時代だ。
さすがに、厭戦気分が全体的に高まっている昨今、
そこまで極端なことは起こりそうにないが、
いつか、彼女の無邪気さが災いを呼ぶことも、
ありえないとは言えない。
もう遅すぎるし、
外国人の自分に何ができたかも分からないけれど、
一人の大人として、心の中で女の子に言わずにはいられない。
私たちだってこんな世の中にしたかったわけじゃないんだよ。
でもなっちゃって、ごめんね。
あと、スーパーでプリゴージンを見つけても、
たぶん気づかないふりをした方がいいよ……