あまりに駆け足すぎたので、
今では夢だったように感じてしまうのだが、
この夏の帰国で貴重だったのは、地元浜松で、
夫のスラバ・カロッテの個展を開けたことだった。
最初からいつ、どこでと具体的に決めていた訳ではない。
だが、いったん場所を決めてしまうと、その場所の都合によって、
自然といろいろなことが決まっていった。
何事も最初の一歩が大事、というのは本当だ。
スラバにとっては日本で初の個展であり、
私にとっても、展覧会の全面的なサポートは初めて。
これまで美術の展覧会は山ほど訪れたが、
サポートといえば、記事を書くか通訳ぐらいだったからだ。
初めての試みというのは、
たいへんだけど新たに得るものも大きい。
まずは、18歳で出てしまった後、けっこう疎くなっていた地元の再発見。
地元でクリエイティブな活動をしている人々との再会や新たな出会い、
そして彼らからのたいへん貴重で大きなサポート。
宣伝を分担してくれた方々の心温まる援助。
一から人と作品が出会う「機会」や「場」を作る緊張感や楽しさ。
そして、展覧会を訪れてくれた旧友や恩師、先輩そして初めて出会った方々との、
かけがえのない交流。
なかには、30年以上会っていなかった幼馴染との、驚きの再会も!!!
インターネット空間が発達したおかげで、
作品の発表という点に関してはずいぶん便利な世の中になったけれど、
今回の試みを経て、やはり、
あるリアルな「場所」を用意し、そこで人々がコピーではない、
オリジナルな作品に出会える「機会」を作ることには、
独特の意味があるのだ、と信じることができた。
リアルの展覧会を開く、つまり
作品と出会う場や機会を作っていくということは、それ自体が創造的な行為なのだ。
かといって、とくに誰もが驚くような、
特別なことをしたわけではない。
でも、
観られる「場」や「機会」と結びついたとき、
作品がぐっと輝きはじめる、
その瞬間を自ら目にできたことは、貴重だった。
もちろん、より良くできたはず、という反省は、
いくらしてもしきれないのだけれど。
最後になりましたが、
新型コロナの流行や猛暑という二重の壁があった中、
オリンピック観戦も脇に置き、
展覧会の実施を助けてくださったり、
展覧会に来てくださったり、
花束やお祝いの言葉をくださったりした方々に、
改めて心から感謝の言葉を捧げます。