イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

冗談のような本当のことたち

最近、冗談のようなことが立て続けに起きている。

時事ネタでもあるので、取り急ぎ古くならないうちに、ということで、

箇条書きでごめんなさい。

 

その1

日本でも、医療関係者の待遇悪化が問題になっているけれど、

それはイルクーツクでも同じらしく、

私がかつて通っていた近所の病院では、経営悪化によって、

お医者さんがみんな解雇されてしまった。

この衝撃的なニュースを告げたテレビの画面には、

私がお世話になっていた先生も映っていて、ショック。

先生、本当にお世話になりました。

ぜひ早く次の職場が見つかりますように。

 

その2

ハバロフスク地方の知事が、過去に殺人を犯していたとして、逮捕された。

ビジネス関係の知人、3人の殺人に関与していたという。

でも、ハバロフスクから来た間接の友人によると、

「コロナ対策もしっかりやっていたし、ちゃんとした知事だったよ」

とのこと。

そこで、ハバロフスクでは、知事の釈放のための署名活動やデモが起きているという。

ハバロフスクはロシア体験の第一歩を踏み出した思い出深い土地。

一日も早い安定を祈るばかり。

 

その3

昨日のけっしてそこまでひどいと思わなかった雨の影響で、

イルクーツクの街の半分の家が今、停電しているらしい。

 

おまけで、プライベート編

 

公共工事の影響による、温水供給の停止はまだ絶賛続行中。

でもさすがに1週間ほどたつと、

お風呂なしの生活に懲りてしまい、

「公共サウナに行こう!」ということになった。

サウナといっても、いわば日本の銭湯のような感覚のお風呂屋さんで、

以前行ったら、よく行っている八百屋さんの店主カップルと出会い、

「こんばんは」とあいさつ、なんてことも。

 

そういった、「お隣さん」感覚の、行きなれたサウナなのだが、

実際の距離はちょっと遠い。

そのため、バスかタクシーで行くのが常なのだが、

思いもかけぬことに、

サウナに行くまでの道も橋も工事中!

市バスも走っていないとのこと。

 

仕方ないので、タクシーで行こうとするも、

当たり前ながら大渋滞に突入。

やがて私たちは

にっちもさっちも行かなくなった車を降りて、

とぼとぼと徒歩で帰宅。

 

この時、すでに疲れが出ていたのだが、

ここでめげては、サウナファンの名がすたると、

今度は自転車をこいで行くことに。

だが、ちと計算違いだったのは、

工事中ゆえ、道がデコボコの極み、

そしてほこりだらけだったこと。

 

その結果、せっかくサウナで体を清めても、

家に帰ってみたら、

行く前以上にほこりだらけになっていた。

結局、そのほこりを落とすために水浴びをせねばならなくなり、

何のために行ったんだっけ?

てなことに。

 

しかもその日はかなり暑かったので、私は移動でばててしまい、

疲れによって、歯が浮きはじめる。

よくあることとはいえ、その日はどういうわけか

歯全体が浮かれまくり、痛いだけでなく、

まともにご飯も食べられない羽目に。

 

そこで、藁にもすがるつもりで翌日、

ウウーッとアスピリンに手を伸ばそうとしたら、

訪ねてきていたスラバの友達が、

「ちょっと待って、もっと効く薬がある」と言って、

ホニャララを買ってきてくれた。

 

そのこと自体はとてもありがたかったのだが、

その薬の飲み方を間違えたのか、

胃が大反乱を起こし始めてしまい、

激痛によってまる2日ほどのたうちまわる。

 

しかもその2日目は、

「絶対に提出せねばならない」原稿の締め切り日でもあったため、

歯痛に胃痛、さらに気圧の低下による頭痛に耐えながら、

痛みが弱まるたびに、必死でパソコンにかじりつく、

不屈のファイター、いやむしろ

仕事中毒のゾンビのような状態になった。

 

不運の連鎖ってよくあることだけれど、

ここまで続くと、もう笑うしかない。

 

笑う門には福きたる

これも冗談でなく、ほんと。