イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

ロシアで相撲を観る

昨日今日、テレビをつけると、相撲の試合をやっていた。

どうも、ロシア国内のチャンピオンシップの様子らしい。

ロシア人らしき行司さんが、

「はっけよい、のこった、のこった」

と言って走りまわっている。

いろんな体重、体形、人種の男女が

一様にまわしをつけて取っ組み合っていて、

女性の力士もかなり健闘している。

テレビの調子が悪いので、色がシュールで恐縮だが、以下がその一場面。

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2年ほど前、モンゴルに旅行に行った時も、

テレビで相撲をやっているのを見つけた。

だが、それはあくまでモンゴル式の相撲だったので、

その時の面白さというのは、

ああ、こんなにルールや着るものや雰囲気が違うんだ、というもの。

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力士はアジア系のモンゴル人ばかりなので、

衣装こそ違え、視覚的には日本の力士と似通っていたし、

女性力士もいなかった。

でも、日本式のこちらは円のなかで、まわしをつけてやっていて、

行司の言葉も日本語なのに、

力士の髪や肌の色や性別はさまざまだ。

初めて観たせいか、そのギャップがけっこう面白い。

試合の様子は以下のサイトなどでも観ることができる。

https://rossumo.ru/

 

恥ずかしながら私は、

このようにロシアで相撲を見て初めて、

女力士の相撲にもけっこう見ごたえがあるということに気がついた。

そして、日本の国技だとか言われているけれど、

私は相撲というものを、どこまで理解していたのだろうか、

とかなり疑問に思われてきた。

知らぬうちに「こう」だと思い込んでいた「相撲」のイメージ。

でも、それってけっこう狭かったんじゃないだろうか。

相撲を愛する人たちは、

じつはもっと多様な世界に住んでいる。

 

日本では今年、新型肺炎の流行のため、

春場所が観客なしで開かれるという。

正直な話、単純に「実験」としては、

観客なしの春場所ってどんな感じになるんだろう?

という好奇心が私にはあるとはいえ、

日本のコアな相撲ファンにとっては、

やはり取組の熱気と一体化したい、という気持ちの方が強いだろう。

そんなファンにとっては、今年の状況はかなりつらいはず。

でもこのように、

相撲好きの情熱はロシアでも熱く燃えていて、

けっこう観客も熱心だ。

だから、そんなに残念がらなくても、大丈夫。