イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

イルクーツクのごみ埋立場ミュージアム

これまで長らく寄稿してきたARTSCAPEの「FOCUS」欄に、

新たな拙稿が掲載されました。

ごみの埋め立て地がミュージアムに――文化的価値と都市のメンツのジレンマ

今回、取り上げたのは、じつにパンクで無邪気で残酷で謎めいた、

軍事マニアも平和主義者も訪れずにはいられない場所です。

 

ロシアにミュージアムは数あれど、

このミュージアムほど今、ホットでありながら、

微妙な立場にもあるミュージアムは少ないでしょう。

 

古物の展示も素晴らしかったですが、脳裏から消えないのは、

矛盾と対立と歴史の余韻を包み込みながら広がる、シベリアの草原と森林。

ちなみに、山火事がひどかったときに平原での展示を見た人は、

「空気が煙っていて、怖いほどリアル!」と感じたのだとか。

 

確かにそうでしょうが、考えたら、

異常に増えた山火事も、巨大なごみの埋立場も、

人の行いが地球を一方的に傷つけている残酷な戦場。

戦禍に苦しむ人々の悲鳴はもちろんですが、

大自然の悲鳴にも耳を傾け続けねば、

と思ったりしたのでした。