先回、ラジオでお話ししたように、
現在、イルクーツクを含むロシアの都市では、
ワクチン接種済みを示すQRコードなどがないと、
大型の公共施設や商業施設、
および食品や医薬品以外を売る店に入れない、
というシステムの導入が進んでいる。
となると、こういう困った情況が生まれる、
子供を遊園地や映画館などに連れていきたくても、
親がワクチン接種を受けていないと、連れていけない。
子供に関しては、QRコードは必要ないので、
連れていけないのは純粋に親の責任だ。
その結果、モスクワで現れたのが、
QRコードをもつ大人に、子供の同伴を頼めるというビジネス。
つまり、すでにワクチン接種を終えてQRコードを取得している、
いわば「QRコードおじさん」、「QRコードおばさん」が、
子供の親の依頼を受け、公共娯楽施設の入り口で子供を預かっては、
子供と一緒に施設に入り、
子供が楽しんでいる間、見守った後、
遊び終わって子供が満足したら、
一緒に外に出て、子供を親に返す、という仕組みらしい。
折しも、コロナ禍によって職を失ったり、
収入が減ったりした人が多いこともあって、
一日に30000ルーブル稼ぐことも可能な、
このQRコードおじさん&おばさんビジネスは、
けっこう人気があるのだそう。
需要があるところには、供給がある。
制度があれば対策がある。
こういう柔軟さ、何だか中国の近さを感じて、興味深い。
それにしても、QRおじさん&おばさん、
ただQRコードがあるだけでは駄目で、
ちゃんと子守もできねばならないわけだから、
けっこう責任は重い。
でも、ただQRコードのためだけに雇われるよりは、
やりがいがあるだろう。
だって、さもなくば人間でありながら、
まるでレジに並ぶ商品や入館証のカードケースさながら。
人間にQRコードがつく時代だってだけでも十分皮肉なのに、
自分の価値がQRコードオンリーになるなんて、あんまりだ。
それにしても、まさかと思っていたディストピア。
じつはそう遠くはなくて、予行演習は、もう始まっているのかも。