イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

『まいにち中国語』のテキストに新連載

4月の頭は新学期が始まる季節、という感覚は、

海外に長く住んでいるとどうしても、

記憶の彼方に遠のいていってしまうのですが、

 春になると、気を引き締めて、やりたかったことをちゃんとやろう、

という気持ちになれるのは、

やはり春に新学年を迎えていた習慣の名残でしょうか。

 

そして何より忘れてはいけないのは、

春は新連載が始まる季節でもある、ということ。

NHKラジオの『まいにち中国語』という番組のテキスト

長らく連載させていただいているエッセイ、

今年の春は、16年半北京に住んだ経験をもとに、

『北京暮らしで見てきたこと』

という連載を始めさせていただきます。

(試し読みではエッセイまでたどりつけなくてすみません)

 

イルクーツクに来てからも、時々見に行きたいと思っていた中国の変化。

ここ1年余は新型コロナの流行のために、実現が難しいままですが、

幸い北京の友人たちが時折、北京の風を届けてくれます。

いい変化も、あまり歓迎できない変化もありますが、

北京はやはり、大事な心の故郷のうちの一つです。

 

また、こちらの中国料理の食材店やレストランには、中国北方出身の人が多いので、

時おり北京語が使えるのも、ありがたい限り。

コロナ禍によって来れなくなったり、帰れなくなったりした中国系の人々は

たいへん多いようで、あるハルピン出身の女性も、

故郷になかなか帰れないことを嘆いていました。

「今、飛行機でハルビンに帰ろうと思ったら、モスクワ、アブダビ、北京を経由しなくてはならない。そんな、地球を一周するみたいな航空券、高すぎてとても買えない」

とのこと。

そりゃ確かに大変だ……。

 

そんなわけで、ロシアー中国間はまだちょっと遠いままの毎日ですが、

この連載を通じて、中国の暮らしが

より多くの人にとって身近に感じられるようになることを

心から願っています。