イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

夢見る人のための椅子

ロシアの新年の初夢

東京か北京かモスクワか、

よくわからない街で地下鉄に乗ろうとして、

専用のICカードを出すが、なぜか

昔の紙の切符のように切れ込みが入っており、

これじゃあ使えないや、と売り場で買い直そうとするも、

なかなかうまく買い直せず、焦る

という夢だった。

 

夢の中で、よくこういう情況に出会わないだろうか。

何かややこしいことが起きていて、

それを早くどうにかしようと躍起になっているのだが、

ある時点で、「これはもしや、現実ではないのでは」と気づく。

 

そこで、いっそ目を覚ましてしまえば、

すべてが楽になるのでは、と思い、

えいや、とすべてを置き去りにして目を覚ます。

すると、確かに目の前には問題など何もなく、

心地よいふとんの中で、心からほっとする。

 

今回の夢でもそういうことになり、

夢と現実の境のようなものがありありと感じられて、

不思議な心持になった。

 

でももちろん、夢より現実の方が楽とは限らない。

先日、

きっと夢の中での方が、座り心地が良さそうな椅子に出会った。

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後ろは『ありふれたファシズム』などの名作で知られる映画監督、

ミハイル・ロンムの故居。

ってことはきっと、これは夢見る人のための椅子なんだろう。