イルクーツクの風の音 

ロシアの中部、シベリアの南、ヨーロッパ文化の辺境、アジアの片隅、バイカル湖の西にある街を拠点にしている物書きの雑記帖                  written by Asami Tada ©2020多田麻美

イルクーツクの奇景 タイムトラベル編 消えてしまった世界最大級

ずっと前から話には聞いていたけれど、

ただ聞くことしかできず、残念に思っていたもの。

それはかつてイルクーツクにあったけど、

その後、壊されてしまったといわれる、

世界最大のティーポット。

 

そんなものがあったなんて、

さすが、かつて中国からヨーロッパまで茶を運ぶティーロードの

主要な中継地点だった街だけのことはある、と思いつつも、

その雄姿は写真でもビデオでも見ることができずにいた。

 

そんななか、ある白黒のドキュメンタリーフィルムの中で、いよいよ発見!

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(他の画像が見つからないので、あえてスチールを拝借させていただくことに)

 

モニュメントとしてのティーポットについては、

これよりずっと大きなものがすでに中国で話題になっている模様。

一方のこちらはもう少し生活感があって、

何だか実際にお茶を淹れられそう。

でも、じっさいに注ぐとなると十人がかり?

 

かの秀吉も真っ青?の

スケールの大きなお茶会が開けそうで、空想を誘うけれど、

よく見るとカップは一つだけ。

つまりこれらは怪力の持ち主や巨人のためにあるのだ。

 

そうなると、どうしても頭に浮かぶのは、

キノコを食べたアリスや、巨人の王国を訪れたガリヴァー。

 

壮大なティーロードをめぐる空想の旅の中継点で、

お茶を楽しむことにかけては一流のイギリスで育まれた、

スケールの大きなファンタジーに誘われるのは、

何だか二重に愉快だ。