昨年秋に亜紀書房より出版された拙著『中国 古鎮をめぐり、老街をあるく』の補記、その5です。
古鎮の顔はいろいろだ。風景が変わり、住人までが入れ替わっても、伝統芸能が脈々と受け継がれることで、原風景が感じられることがある。
かつて、旅の通過点として訪れただけの広東省、湛江。
表向きは近代的な都市に見えたので、あまり深く知る機会はなさそうだと思っていところ、成都で人形劇フェスティバルを訪れた時、湛江の独り人形劇が上演されていた。
台湾の布袋劇に少し似ていて、味わい深い。
おじさんは普段はもちろん黒子で、この写真は顔が出た瞬間をとらえたものだ。
中国で古い町を訪れるたび、しばしば残念に感じたことがある。
それは、地元で有名な伝統劇とされている人形劇や影絵劇などを楽しみにしながら訪れても、
実際に探してみると、その土地ではなかなか一般向けの公演をしていなかったりすることだ。
お偉いさん向けの限定公演しかなかったり、普段は大都市などに公演に出ていたりして、よほど時期を狙わないと観ることができない。
本気で地元興しをするなら、古いものに似た、本当は新しい建物を建てるのではなく、
こういう地元の芸能を援助する方がいいんじゃないか、とつくづく思ったものだった。
やはり、こういうお芝居は土地の香りが染みついているので、地元で観てこそ面白い。
いつか、湛江でこの人形劇を観られる日が来るだろうか。